世界の果てに - 百年の光 -
目まぐるしく動くあたしの思考に、チェディさんの声が届く。
「百年に一度、異世界から人間が呼ばれます。そして皆、その役目を果たしたのです」
「みんな、世界を救えたってこと?」
首を傾げるアスティに、チェディさんは苦い顔をする。
「…はい。ですからこの世界は今、動いているのです。そしてまた、傾いている…」
「ちょっと待て」
エルの制止の言葉に、あたしは眉を寄せたまま顔を上げる。
同じく眉を寄せたエルが、チェディさんを不思議そうに見ていた。
「百年に一度、異世界から人間が呼ばれるんだよな」
「はい」
「お前は、その人間に会ったって言った。そして百年経った今、コイツにも会ってる…おかしくないか?」
エルの言いたいことが分かって、ハッとする。
確かに、百年のペースで異世界から人間が呼ばれ、その人に会ってるなら…チェディさんは今、百歳以上ってことになる。
「…それは、百年が経っておらず、五十年しか経過していないからです」
「えっ…?」
チェディさんは困ったように、あたしを見た。
「何かが、変わってしまったのかもしれません。前回世界が傾いてから、まだ五十年しか経っていないのです」
その事実に、頭がますます混乱した。
百年が経つ前に、世界が傾き始めた。そして、あたしが呼ばれた。
前回、世界を救いきれなかったのかもしれない。