世界の果てに - 百年の光 -
辺りに人がいないことを確認してから、やっとフィオが口を開く。
「…神の祭壇に捧げられるのが、黒髪の少女なんです」
―――神の祭壇。
そこに捧げられるということは、生け贄になることを意味する。
「…早いな、今回は」
オーガの言葉の意味を理解して、フィオは神妙な面持ちで頷く。
「はい。前回から、まだ五十年です。…けれど確実に、時は迫ってきています」
それは、オーガも感じていることだった。
世界は、確実に傾いている。
「その子は、お前が呼んだのか?」
投げ掛けられる視線に、フィオは俯く。
「そう…です」
「そっか。そんな気に病むなよ。仕方ないことだ」
そう。この世界のためには、仕方ない犠牲。
…仕方ないと思ってしまう自分に、腹は立つけれど。
「…でも、お前が呼んだなら、その子がどこにいるのか分かるんじゃねーの?」
フィオは俯いたまま、唇をきゅっと結んだ。
オーガを探すように、魔術の根源を辿ればいい…たったそれだけのことが、出来なかった。