世界の果てに - 百年の光 -
∴手と手
「とりあえず、これからは慎重に行かないとね」
ひっそりと月が覗き込む、深夜。
アスティの祖国であるメルティアスを出たあたしたちは、その晩を道の途中で明かそうとしていた。
「だな。下手に動き回ると、コイツの居場所が掴まれちまう」
国王様に頂いた食料を頬張りながら、エルがアスティに答える。
あたしはパンを手に取ったまま、燃える薪をじっと見ていた。
「ただでさえ、魔術師さんとやらが、リオを必至に探してるだろうしね…」
アスティの視線が向けられても、あたしは薪から目を逸らさなかった。
そんなあたしに、エルが苛ついたようにため息をつく。
「お前なぁ。あんだけ言ったのに、まだ不安なのかよ」
「…そんなんじゃ、ないよ」
「じゃあなんだ。言え」
相変わらずの俺様っぷりに、あたしは観念して顔を上げる。
射抜かれそうな視線に躊躇いながらも、あたしは考えていたことを口にした。
「クリスが…可哀想だと思って」
「あん?」
エルは眉をひそめると、近くの木に繋がれているクリスを見た。
クリスはその小さな瞳を、あたしに向けている。