世界の果てに - 百年の光 -
∴月の咆哮
………‥‥
顔に触れる温かい感触で、オレは目を覚ました。
「―――…ッ」
体を起こすと、鈍い痛みに襲われて顔をしかめる。
そこで、すぐ近くにいた純白の馬が視界に入った。
「…クリス」
名前を呼ぶと、クリスは悲しげにヒヒンと鳴く。
自分の頬に触れると、べっとりとした感触。
きっと、クリスがオレの頬を舐めたんだろう。
「クリスが、起こしてくれたんだね」
微笑むと、クリスはオレに顔を擦り寄せて来た。
その頭を、優しく撫でてから辺りを見渡す。
―――エル、リオ…
ついさっきまで一緒にいた仲間の姿は、跡形もなく消えていた。
あれはほんの、一瞬の出来事。
男の子が行く手を遮ってると思ったら、次の瞬間には目の前が真っ暗になっていた。
「……くそ」
不意を衝かれたとは言え、自分の反応が遅れたことに悪態を吐く。
クリスはそんなオレを励まそうとしているのか、必死に顔を擦り寄せていた。
そうだ。
嘆いてばかりじゃ、何も変わらない。