世界の果てに - 百年の光 -
オレはゆっくりと、地面から起き上がる。
覚束ない足取りは、徐々に冴えていく頭と共に、しっかりとしてきた。
…相手は、エルとリオだけを拐って行った。
それは、二人の方が価値があると思ったから?
それとも、他に理由が…?
「………」
顎に手を添え、ちらりとクリスを見遣る。
クリスを連れていかなかった理由が、運べなかったからだとしたら。
オレも一緒に残された理由も、同じ可能性が高い。
「相手が少ないか…非力か」
どちらかと言えば、前者のような気がした。
力がないなら、こんな不意討ちは避けるだろう。
相手の人数が少ないんだとしたら…そう遠くには、行けないはず。
「…行こう。クリス」
オレたちの荷物も持ち去られている所を見ると、オレたちを襲ったのは人拐いか何かだろう。
早く探し出さないと、二人が危ない。
クリスの手綱を引いて一歩を踏み出すと、何かに躓いた。
「何…、鍵?」
拾い上げると、それは小さな鍵だった。
暫く見つめてから、自分のポケットにしまい込む。
僅かに地面に残った足跡を頼りに、オレはクリスと共に、再び歩き出した。