世界の果てに - 百年の光 -
巨大な口が、スローモーションで迫ってくるような気がした。
為す術もなくて、あたしは自然に両目を瞑った。
「―――――諦めんのか、お前は」
聞こえた声が信じられなくて、あたしは弾けるように顔を上げる。
巨大なトカゲの上で―――オレンジの髪が、月夜に照らされて輝いていた。
「…エ、ル…?」
エルが両手で握る剣が、トカゲの頭上に突き刺さっている。
トカゲは痛みで唸ると、エルを振り落とそうと頭を振った。
「あーあ。中途半端に刺すから痛がってるよ」
別の声がどこからともなく聞こえた瞬間、トカゲのお腹に大きな×印の傷がつく。
トカゲは一際大きく喚くと、ゆっくりと倒れ、動かなくなった。
土埃の奥で、ゆらりと影が動く。
「…アスティ…!」
アスティは二本の剣を、ゆっくりと鞘に収めると微笑んだ。
その横に、トカゲの頭から飛び降りたエルが着地する。
あたしは信じられなくて、瞬きを繰り返した。