世界の果てに - 百年の光 -
…ほんの、数十分前。
あたしとエルは、イーズくんとケルンさんに連れられ、山奥へと入った。
そこには小さな小屋があって、中からおじさんが現れた。
その容姿から、イーズくんが言ってたハゲ親父はこの人なんだとすぐに分かった。
その人は、人拐いが手に入れた人を買い、さらに他の場所で売り渡す、仲介人のような役割を果たすらしい。
イーズくんたちを見た瞬間、おじさんはボサボサの眉をひそめた。
「…なんだ貴様ら、また来たのか?」
「直接、売り物を見て貰おうかと思ってね」
挑発的なイーズくんの言葉に、あたしは顔をしかめる。
同じ人間なのに、売り物って呼び方はひどい。
ここで作戦失敗になるのは困るから、出かけた非難の言葉は、すぐに呑み込んだ。
「ほー。売り物とは、そこの小僧と小娘のことかね?」
垂れた顎を擦りながら、おじさんはあたしとエルをじろじろと見る。
その舐めるような視線に、吐き気がした。
「ふむ。全く価値があるとは思えんが。…小娘の方は、物好きに売れるかもしれんがなぁ」
一瞬、獲物を射竦めるような妖しい瞳が、あたしを捉えた。
背筋を這うような恐怖から、身体が固まる。