世界の果てに - 百年の光 -
そこで、おじさんの視線が、あたしの左手首へと移った。
「…ん?何だね、それは」
その質問を待っていたかのように、ケルンさんが素早く口を開く。
「俺たちが誤って、手錠をかけてしまったんだ。だから、二人一緒に売りたい」
「何だと?それじゃあ余計に価値が下がるぞ」
「…そんなことねぇよ?」
余裕たっぷりの声音に、おじさんが振り向く。
あたしの隣で、エルがニヤリと笑った。
「売られる立場ってことを、分かっているのかね君は」
おじさんが険しい表情で睨んでも、エルはケロッとしている。
「そっちこそ、俺の価値分かってんのかよ」
「何?」
エルは繋がっていない方の左手で、自分の左目を指す。
「―――"月の咆哮"って、知ってるか?」
それはぞっとするほどの、冷徹な笑みだった。
今まで見たことのないエルの表情に、恐怖すら覚える。
「月の…?ま、まさかっ…!」
何かに気付いたように、おじさんが声を上げた。
見開かれた瞳は、エルの左目に縦に入っている傷跡を、上から下に何度も追っている。