世界の果てに - 百年の光 -
前にも一度、エルの左目の傷を見て、恐怖を浮かべた人がいた。
…ねぇ、エル。
あなたはその左目の傷跡に、何を背負ってるの…?
「わ、分かった!この二人を、高額で買い取ろう!」
慌てた様子のおじさんを見て、イーズくんとケルンさんが顔を見合わせる。
ひそめられた眉から、二人には、エルの言葉の意味が分からなかったんだと思った。
「書類と金を持ってくる!」
その場から逃げるようにして、おじさんは小屋へと消えた。
残されたあたしたちの間を、沈黙が支配する。
「…君、何者?」
沈黙を破ったのは、まだ男の子にしては高い、イーズくんの声だった。
何かを見破ろうとする視線に、エルは肩を竦める。
「ただの盗賊だけど」
「嘘!あのハゲ親父が、すんなりと金を出すなんてっ…」
「いいだろ。金出すっつってんだから」
言いたくないのか、言う気がないのか。
エルはこれで話は終わりだと言わんばかりに、冷ややかな視線をイーズくんに向けた。
「俺たちは途中で逃げて、またここに戻る。逃げんなよ」
「…逃げないよ。約束の七割は、ちゃんと渡す」
イーズくんが苦い顔でそう言ったとき、小屋の扉が開いた。