世界の果てに - 百年の光 -
「間違ったことなんか、してないって?」
何が可笑しいのか、女の人は声をあげて笑った。
ただその瞳は、笑っていなかったけど。
「―――そんな言葉は、もう要らない」
危ない、と思った。
ただ反射的に、あたしはエルを突き飛ばしていて。
それに引っ張られるように、あたしもエルの上に雪崩れ込んだ。
「……っ、おい…ちびっこ!」
痛くなんかない。気のせいだ。
いくらそう思っても、この刺すような痛みは嘘じゃないし、お腹から流れ出る血も、気のせいなんかじゃなかった。
「ちびっこ!」
「……エ、ル…あたし…」
あたしを抱えたエルの琥珀色の瞳に、自分が映る。
「…あた、し…死んじゃう、の?」
身体を脈打つ熱で、視界が滲む。
「バカ野郎!死なねぇよ!」
あたしを心配してくれるエルが可笑しくて、こんな場面なのに笑みが浮かぶ。
そんなあたしに、エルが唇を噛んだ。
「…何で…俺なんか庇ったんだよ」
その声は、想像以上に弱々しかった。