世界の果てに - 百年の光 -

俺が"月の咆哮"でしてきたことは、盗賊という形であれ、人助けのつもりだった。


恐れられることはあったが、感謝されることもあった。


それが間違ってるなんて、思ったこともなかった。



…けど、あの女頭は、俺たちを殺したい程に憎んでいた。


憎しみを向けられたのは初めてで…心が、鈍ったんだ。


「……あの女…何か、言ってたか?」


少し掠れた声で訊ねると、アスティは考える素振りを見せた。


「んー…、特に、何も?」


その答えが、本当かどうかなんて分からない。


でも、今はアスティの言葉に甘えたかった。


「…そっか。ありがとな」


「うん」


アスティは微笑むと、イーズとケルンを見て口を開く。


「…それじゃあ、戻ろうか。リオを診てくれてありがとう。イーズ」


「ううん、こちらこそありがとう」


初めて、子供に似つかわしい笑顔を見た気がする。


それが、本当の姿かもしれないけど。


「エル、リオ運んで」


「…俺かよ」


他人のことあれこれ考えるなんて…どうかしたな、俺も。

< 271 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop