世界の果てに - 百年の光 -
俺が"月の咆哮"でしてきたことは、盗賊という形であれ、人助けのつもりだった。
恐れられることはあったが、感謝されることもあった。
それが間違ってるなんて、思ったこともなかった。
…けど、あの女頭は、俺たちを殺したい程に憎んでいた。
憎しみを向けられたのは初めてで…心が、鈍ったんだ。
「……あの女…何か、言ってたか?」
少し掠れた声で訊ねると、アスティは考える素振りを見せた。
「んー…、特に、何も?」
その答えが、本当かどうかなんて分からない。
でも、今はアスティの言葉に甘えたかった。
「…そっか。ありがとな」
「うん」
アスティは微笑むと、イーズとケルンを見て口を開く。
「…それじゃあ、戻ろうか。リオを診てくれてありがとう。イーズ」
「ううん、こちらこそありがとう」
初めて、子供に似つかわしい笑顔を見た気がする。
それが、本当の姿かもしれないけど。
「エル、リオ運んで」
「…俺かよ」
他人のことあれこれ考えるなんて…どうかしたな、俺も。