世界の果てに - 百年の光 -
初めて、かもしれない。
新しい土地に行くことが、怖いと感じたのは。
だって、サイリアに行くってことは…世界が傾いているという事実を、目の当たりにするってことだから。
「俺だって、行きたかねぇよ」
そう言って顔をしかめるエルに、あたしは首を傾げた。
すぐ近くにいたアスティが、可笑しそうに笑う。
「リオ。エルはね、イーズとケルンにまた会うのが嫌なんだよ」
「え?」
イーズくんが人拐いを辞めて、お医者さんを目指すなら、きっと自分の国に戻ると思う。
もしまた会えたら、嬉しいのに。…違うの?
「何で嫌なの?」
そう訊くと、エルは「別に」と素っ気なく言って顔を逸らす。
その態度をますます疑問に思い、眉をひそめると、アスティがあたしの肩を優しくつつく。
「あのね、エルはイーズたちと、契約を交わしてたでしょ?」
「アスティ!」
エルの咎めるような声を、アスティは気にせず微笑んでいる。
契約って…エルを売ったお金の、七割はあたしたちのもので、三割はイーズくんたちのってやつ?
あ、それと、あたしたちから盗んだ荷物を全部返すってやつだ。
それが、何に関係あるんだろう。