世界の果てに - 百年の光 -
「いやね、一週間くらい前に、額に傷のある茶髪のお兄ちゃんに会ってね。その子が、黒髪の少女を知らないかって言うんだよ」
「………!」
あたしたち三人は、お互いに顔を見合わす。
良い予感が全くしない中、おじさんは意気揚々と続けた。
「知らないって答えたら、そのうちきっと栗色の髪のアスティって少年が、その黒髪の少女と一緒にこの国に来るって言うんだよ」
そう言うと、おじさんがズボンのポケットから紙を取り出した。
それを、アスティに向けて差し出す。
「そのアスティって子に会ったら、渡してくれって頼まれたんだ」
アスティはすぐに受け取ると、丁寧に折り畳まれた紙を開いていく。
ザッと目を通したらしいアスティが、不意に呟いた。
「……オーガ」
「そうそう!その茶髪の少年は、オーガって名乗ってたよ」
いやぁ本当に驚いた、と言って頷くおじさんをよそに、エルがアスティに問い掛ける。
「誰だオーガって。知り合いか?」
「…うん。前に、カフェで会ったんだ」
動揺で瞳を揺らしながら、アスティがあたしを見る。
きっと良い話じゃないんだろうな、と思いながらも、あたしはアスティを見返した。