世界の果てに - 百年の光 -
「…イーズくん!」
手に巾着を持ったまま、エルじゃなくイーズくんを呼ぶ。
くりっとした瞳があたしを捉えることを確認して、再び口を開いた。
「―――ありがとう」
一瞬の間があってから、イーズくんが笑う。
「あはは!いいよ別に!君が、僕の最初の患者さんなわけだしね」
「…うん。ありがとう」
あたしの怪我を治してくれて。
エルを…優しい表情にしてくれて、ありがとう。
「オラ、さっさと詰んでこい」
「分かってるってば!」
荷台に向かう少しの間、あたしの口許はずっと緩んでいた。
エルは、あまり他人に心を開かないと思ってたから…イーズくんに対してあんな表情をしたのが、嬉しいんだ。
荷台の袋に巾着を入れて戻ると、アスティがケルンさんと話していた。
「ユピカって、この先の通りを真っ直ぐだよね?」
「ああ。…ユピカに行くのか」
そのやり取りに、あたしは首を傾げながら参加する。
「ケルンさん、顔が渋いけどどうしたの?」
「ケルンが渋いのはいつものことだよ」
ケラケラと笑うイーズくんに、ケルンさんの眉間のシワが深まる。