世界の果てに - 百年の光 -
「イーズ、うるさい。…ユピカは今、悪い噂が流れてるから気を付けた方がいい」
「…悪い噂?」
眉をひそめると、ケルンさんが神妙な面持ちで頷いた。
「…若い女が、忽然と姿を消すらしい」
その真剣な瞳に、思わずごくりと喉を鳴らす。
イーズくんが隣で、「あー、それかぁ」と呑気に声を上げた。
「何かね、神隠しだって噂になってるんだよ」
「神隠し…」
アスティの紫の瞳が、ちらりとあたしに向けられる。
心配の色が滲むその瞳に、笑ってみせた。
「大丈夫だよ!あたしは、ほら…おいしそうじゃないし!」
「美味しそうって…リオ、別に食べられるわけじゃないと思うよ」
「確かに不味そうだしな」
ニヤニヤと笑うエルに、べーっと舌を出してからアスティに言った。
「とにかく、大丈夫だから!出発しよ!」
未だに不服そうに眉を寄せるアスティの背中を、ぐいぐいと押す。
…本当は、聞かなきゃよかったなんて、思ってるんだけど。
昔から、お化けとか心霊現象とか、そういった類いは苦手だった。
神隠しなんて…考えるだけでも恐ろしい。