世界の果てに - 百年の光 -

お化けが怖いなんてバレたら、エルにバカにされるに決まってる。


なるべく平静を装いながら、あたしは早くこの話題から逃れようとした。


「イーズくんケルンさん、本当にありがとう!」


「…まぁ、気を付けてね。君の怪我だって、まだ全快じゃないだろうから」


そう心配そうに言うイーズくんの表情は、もう立派なお医者さんだと思った。


あたしが大きく頷くと、エルが「行くか」と言ってクリスの手綱を引く。


「…じゃあ、またね!」


あたしたちはイーズくんとケルンさんに別れを告げると、サイリアを出た。





特に変わったこともなく、旅は順調に進んでいた。


山賊やら何やらに襲われることもなく、道も比較的歩きやすかった。



安心していいはずなのに、安心できなかったのは、それ以上に不安が大きかったから。


これから向かうユピカで会うのは、あたしが異世界から来たことを、恐らく知っている人物。


そしてそのユピカでは、神隠しの噂が囁かれている…


「リオ、大丈夫?」


アスティに顔を覗き込まれ、驚いて立ち止まる。


そのせいで、後ろにいたエルにぶつかった。


「ご、ごめ…」


「…ったく、本当にお前は不安がすぐ顔に出るな」


振り返ると、エルが呆れたようにあたしを見下ろす。


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