世界の果てに - 百年の光 -
「ちょっと…、ねぇってば!」
呼びかけたところで、猫に言葉が通じるはずもないんだけど。
あーもう、あたしのバカ!
…気付いた時には、あたしは自転車を乗り捨て、駆け出していた。
猫は暢気に道路を歩いている。
車が猫に気付いたのか、耳を貫くようなクラクションが鳴り響いた。
そしてあたしは、手を伸ばす。
「―――――っ!」
パァーッ、という音と共に、車が通りすぎて行った。
あたしは肩で息を切らすと、腕の中の猫を見た。
「…よかった…」
なんとか間に合った。
あたしが安堵のため息をつくと、猫が急に暴れだした。
「え!? ちょっ…」
猫はスルリとあたしの腕を抜けると、一目散に逃げ出した。
あたしはその黒い後ろ姿を、呆然と見つめた。
…何て恩知らずな猫なの。
あたしはゆっくりと立ち上がると、制服の埃を払った。