世界の果てに - 百年の光 -
………‥‥
―――あと、五分。
酒場の壁にかかる時計を見上げ、オレは扉へと視線を移した。
オーガが現れる気配は、今のところない。
そもそも、オーガが手紙をサイリアのおじさんに渡したのは、十日は前になる。
その間ずっと、この国にいたのかな…
「よぉ兄ちゃん、一人か?」
―――ドクンと、心臓が鳴った。
カフェで声を掛けられた時のことが、昨日のように思い出される。
ゆっくりと振り返ると、そこには男の姿があった。
「………オーガ」
茶色の刈り上げられた髪に、額に見える大きな傷跡。
名前を呼ぶと、淡い紺の瞳が楽しげに細められる。
「久しぶりだな、アスティ」
オーガはカウンター席の、オレの隣に腰掛ける。
賑わう酒場の雰囲気は、今のオレにはそぐわない気がした。