世界の果てに - 百年の光 -

坊主頭の店主に、オーガがカクテルを注文する。


「…いつの間に、ここにいたの?」


その横顔を眺めながら、オレは訊ねた。


「ん?二階にいた」


「二階?」


「そ。ここの二階、宿になってるからさ。そこでずっと寝泊まりしてたってわけ」


カクテルを受け取ったオーガは、そのまま口に運ぶ。


「…それにしても、来ないかと思ってた」


ごくりと喉を鳴らした後、オーガがオレを見て言った。


オレは無表情のまま、「何で?」と訊ねる。


「何でって…普通、怪しいと思ったりするだろ?理由も分からず呼び出されりゃさ」


「別に、理由は分からなくないよ」


オレの答えに、オーガは少しだけ目を丸くする。


「…理由分かってんのに、来たのか?」


「理由は分かる。でも、心当たりはない」


じっと見つめていると、オーガはやれやれと肩を竦めた。


「とぼけるってワケか」


そう言って、再びカクテルを口にする。

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