世界の果てに - 百年の光 -
オーガの口から紡ぎ出された言葉に、オレは思わず立ち上がった。
一瞬、酒場は静寂に包まれたかと思うと、またすぐに明るさを取り戻す。
「そんなに驚くかぁ?」
オーガに笑われながら促され、オレはゆっくりと腰を下ろす。
…そうだ。思い出した。
「アメルティカ国の…祭典で会ったね」
「ま、十年以上前だけどな」
あの日、オレは父さんに連れられて、アメルティカ国の祭典へと足を運んだ。
初めての大国で、緊張しながら会ったのは、アメルティカ国王と―――その、息子。
「オーガ…王子」
目の前の王子は、困ったように、どこか嬉しそうに微笑んだ。
「最近王子なんて呼ばれねぇから、照れんな」
「その王子が…どうしてオレに?」
ますます真意が分からず、逸る気持ちを抑えながら訊く。
オーガは何かを決意したかのように、カクテルを一気に飲み干した。
「…俺がこの世界を放浪するようになったのは、五年程前だ」
どこか遠くを見ながら、オーガが語り出す。