世界の果てに - 百年の光 -
悩むように唸ると、オーガは少しだけ声を潜めて言った。
「…五十年前の時は、親父の父…つまり、俺の祖父が異世界から人間を連れてきた。処刑は、アメルティカで行われた」
「処刑?」
その響きに、思わずゾッとした。
生け贄とは、そういう意味を持つのか。
「公開処刑だったよ。生け贄としてじゃなく、罪人として少女は処刑されたんだ」
オーガはまるで、その光景を見ていたかのように、苦々しげに語った。
「…アスティ。この世界が今、傾いてるって…分かるよな?」
僅かな沈黙の後、オレは小さく頷いた。
「だから…リオが呼ばれたんでしょ?」
「まぁな。世界が傾いたら、異世界から生け贄となる人間を呼ぶ…これが、アメルティカの王族に伝わる掟なんだ」
「掟…」
オレが顔をしかめると、オーガは真剣な表情のまま口を開く。
「馬鹿げた掟だと思う。けど…実際生け贄を捧げることで、世界は元通りになっていたんだ。だから今回も、仕方がないことだと思った」
「………」
「けどさ、もしかしたら…俺が国王になった時に、生け贄を選ばなきゃいけない時が来るかもしれないだろ?そう考えたら、無理だって思ったよ」
肩を竦めるオーガは、今何を想っているんだろう。