世界の果てに - 百年の光 -
あたしの睨みに、鉄格子を挟んで目の前にいる男は笑う。
「そんなに睨んだって、怖くないよ。可愛いけどね」
可愛い、という単語に背筋がゾクッとした。
喜べないのは、相手は敵だと判断しているからだと思う。
「そうだ。君の名前は?僕はダルク」
にこっと笑いかけられ、もう訳が分からなくなる。
友好的な態度だけど、あたしのこの仕打ちは何?
「んー!んんー!」
取り敢えず唸って、口元を自由にしろと訴えかける。
あたしの言いたいことが分かったのか、ダルクは鉄格子の鍵を開けて、中に入ってきた。
あたしの前にしゃがみこむと、そっとガムテープを剥がす。
「ごめんね。昔の癖で口は塞いじゃうんだよね」
「…ぷはっ!昔の癖?」
「うん。盗賊」
訝しげな視線を送ると、ダルクはアッサリとそう答えた。
思わず絶句していると、そんなあたしに気付いたダルクが、フッと笑みを零す。