世界の果てに - 百年の光 -

リュウに言われた通り、俺は月の咆哮に入ってから、実戦経験は浅かった。


それでも、昨日は今までの戦闘とは違った。


あんなに足がすくんだのは、あんなに恐怖を感じたのは、初めてだったんだ―――…


「ちゃんとローアンに礼言っとけよ」


俺の頭をポンと叩くと、リュウは腰を上げて立ち上がった。


見上げる俺に微笑んでから、他の仲間の元へ行ってしまう。


…一人でよく考えろってことだろ。



立ち竦んでいた俺は、敵に狙われて、間一髪の所でローアンに助けられた。


礼を言わなきゃいけないのに、咄嗟に口を突いて出たのは、別の言葉だった。



―――――『余計なことすんなよ!』



その時のローアンの表情が、頭から離れない。


傷付いたような、苦しそうな顔。


あれから俺は、ローアンと一言も口を利いてない。

< 345 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop