世界の果てに - 百年の光 -
∴強さ
………‥‥
「…それから、俺たちは暫くローアンなしで活動を続けたけど、長くは持たなかった」
エルはあくまで、ここまでの経緯を淡々と語った。
その瞳の奥に、込められている感情を出すことなく。
「月の咆哮を解散して、俺は単独で盗賊を続けた。…で、アスティと出会ったのは話した通りだ」
「…ダルクと、ユーリは?」
「あー。あいつらは月の咆哮を続けてたときに関わって、俺とアスティで旅してる時も何度か会って…。まぁ、腐れ縁てやつだな」
オレンジ色の頭をポリポリと掻きながら、エルが答える。
空をさまよっていた視線が、不意にあたしに向けられた。
「他に、質問は」
「え…、え?」
突然そんなこと言われても…あ!
「そ、その短剣って今も持ってるの?」
訊いてすぐ、バカな質問をしたと後悔した。
そのとき初めて、エルの瞳が揺らいだから。
「…置いてきた。ローアンの墓に」
「………そっ、か」
ああもう。どうしてあたしは、気の利いた言葉一つ言えないんだろう。