世界の果てに - 百年の光 -
エルは軽くため息を吐くと、「今度は、どこに」と言った。
それだけで、前の言葉を覚えていてくれたんだなと思う。
「…月の、咆哮に…行かないで」
絞り出すように、あたしはそう訴えた。
ダルクの言葉が、エルが逃げ出した理由が、今なら分かる。
―――『活動を…月の咆哮を、再開するんだって。誘われてるんだよ、僕らは』
エルの大切な人が、大切な仲間がいた場所。
戻りたい気持ちと、戻りたくない気持ちが葛藤してるんだ…きっと。
「あたしは…エルとアスティと、クリスと一緒にいたい。だから…」
「バーカ」
突然デコピンをされ、あたしは言葉を詰まらせて唸った。
おでこを擦ると、優しく微笑んだエルが目に入る。
「行かねぇよ。どこにも」
どこか吹っ切れたような、清々しいその表情に、あたしはホッと胸を撫で下ろす。
良かった…本当に。
エルがいなくなったら、なんて考えただけでも嫌だもん。