世界の果てに - 百年の光 -
∴動き出す
朝。
「クリス―――ッ!」
あたしは勢いよく、純白の毛並みを持つクリスに抱きついた。
結局、あたしたちはダルクの家に一晩泊めて貰って、早朝に別れを告げて出発した。
毎回毎回思うけど、あたしたちのクリスの扱いはひどいと思う。
「うう。ごめんね…クリスだって人間なのに」
『いえ、大丈夫ですよ。…少しは寂しいですけど…』
「だよね、寂しかったよね」
あたしは涙目になりながらも、クリスの鬣を撫でる。
「…つってもなぁ…馬連れてく場所には限りあるしな」
エルが欠伸を繰り返しながら、そう言って頭を掻く。
その隣で、アスティも困ったように笑っていた。
「うーん、早く元の姿に戻してあげたいけど…オーガ?」
アスティの視線を追ってオーガを見ると、口をあんぐりと開けていた。
見開かれた目が、クリスだけを見つめている。
「え、馬…しゃべ、え?人間?」
ああ、この驚き具合…そうだよね、普通馬がしゃべったらびっくりするよね。