世界の果てに - 百年の光 -
あたしは少し迷った末、口を開いた。
「…お財布持ってないんだけど…」
あたしはこの世界へくる際、何も持って来れなかった。
黒猫を助けるために、カバンと自転車を投げ出しちゃったから。
唯一あるのが、身に付けている高校の制服と、元凶であるブレスレットだけ。
「そういえば、リオの服って変だよね」
顔をしかめるエルの隣で、アスティが唐突にそんなことを言い出した。
「変?これ、日本だと学生はほとんど着てるんだけどな…」
あたしは自分が着ている制服を眺めたあと、街の人たちに視線を走らせた。
…確かに、この世界の服装と比べたら、少し変わってるかもしれない。
「よし、こうしよう」
アスティはポンと手のひらを叩くと、言葉を続けた。
「このあと、リオは街で買い物するといいよ。硬貨を入れる巾着とか、服とか、必要なものあるでしょ?」
「おいアスティ…」
アスティの提案に、エルが呆れたようにため息をついた。