世界の果てに - 百年の光 -
スローモーションで迫る猛獣を見ていると、急に視界が回転した。
「!?」
「グギャアアアァァァ!」
何が起きたか分からないうちに、猛獣の苦痛に満ちた声が辺り一面に響く。
ようやく、あたしは現状を飲み込み始めた。
「……あのなぁ、お前のその剣は飾りか?」
「………エル」
呆れ顔でそう言ったエルは、自らの長剣に纏う赤を、振り払って落とす。
その奥に横たわる猛獣は、ピクリとも動かなかった。
―――あたし…エルに助けてもらったんだ。
「ちょっとぐらいは、立ち向かって…」
エルの言葉が、途切れる。
その原因は、紛れもなくあたしだ。
「おい。……はなせ」
すぐ耳元で、エルの声が聞こえる。それでもあたしは、エルの体から離れなかった。