世界の果てに - 百年の光 -
翌朝。
鈍い体の痛みに目を覚ますと、既にエルとアスティの姿がなかった。
一瞬ドキリとしたけれど、小さな机に残されたメモを見て安心する。
ーーー"リオへ。クリスにご飯をあげてくるね。準備が出来たらおいで"
見たこともないはずの文字。でも当たり前のように読めるのが不思議で、それでいて少し嬉しい。
今日は、決戦の前日。
残された時間で、この世界で生きたことを、しっかりと胸に刻みたいんだ。
手早く身支度を整えて、壁に立て掛けていた長剣に手を伸ばす。
最初は戸惑ったこの重みにも、だんだんと慣れてきた。
「ーーーうん、大丈夫」
自分に力を入れるように、小さく呟いてから部屋を出たところで、ばったりとエルに出くわした。
「わっ、びっくりした。おはようエル」
「何だ起きてたのか。いびきかいて寝てるかと思ったんだけど」
「……普通におはようって返せないの?」
っていうか、いびきなんてかいてない!という主張はスルーされ、早く行くぞと言ってエルは背中を向けた。
「………」
何だかんだ言って、様子を見に来てくれたんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、目の前の背中を追う。