世界の果てに - 百年の光 -

∴始動



「ん〜…、いい天気だなぁ」


あたしはのんびりと伸びをすると、宿の窓から外を眺める。


外をひらひらと舞う、鮮やかな花吹雪。


朗らかに響くラッパの音が、式典の開催を告げていた。


「リオ」


コンコンと軽く扉を叩くアスティの呼び掛けに、あたしは短く返事をする。


扉を開けて入ってきたのは、いつもの服装をしたエルとアスティ。


黒のインナーに、ベージュのカーゴパンツ、焦げ茶のブーツ。そして赤紫のスヌード。


日本でも普通にいそうな格好だ。…大きめのスヌードは口元まで隠れて、ちょっと怪しいけど。


「やっぱりリオは、ワンピースが似合うね」


「あはは、そう?」


アスティに微笑まれ、あたしは改めて自分の格好に目をやる。


昨日ユーリから貰った、侍女の服。白いシャツに、黒いワンピース…さらに白いエプロンがついていて、メイドのコスプレをした気分だった。


「…違和感丸出しだな、その髪」


もちろんエルは、可愛いねなんて甘い言葉をかけてくれるわけもなく、眉を寄せてそんなことを口にした。


…まぁ、あたしもこの赤茶のウィッグには違和感あるんだけどね。


この世界では滅多にいないという黒髪は、城の中では悪目立ちするということで、王の間に辿り着くまではこの髪色。
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