世界の果てに - 百年の光 -
「…おい、聞いたか?メルティアスが…」
「…らしいな…トレッタ国も…」
通りすがりの街人から飛び込んできた会話に、俺は思わず足を止めた。
ちびっこが不思議そうに振り返る。
「?…エル?」
「…何でもねぇ」
再び歩き出しながら、さっきの会話が頭を巡っていた。
メルティアス?あの大国に何が…それにトレッタって言ったら、技術の最先端をいく国…
この世界に今、何が起こってるんだ?
ふと気づけば、隣にあるはずの姿がなかった。
「!?」
あんのちびっこ、どこ行きやがった!?
慌てて辺りを見渡すと、ほんの数メートル先に、この世界では珍しい黒髪を見つけた。
「…そうですか。ありがとうございます」
「何やってんだお前は!」
肩を掴むと、ちびっこは「あ、エル」とか暢気に返事をした。
「この人に、話を聞いてたの」
ちびっこの言う「この人」は、へらへらした若い男だった。