世界の果てに - 百年の光 -
………‥‥
エルとアスティが部屋を出てから、僅か十分。
窓の外を眺めていたあたしは、扉を叩く音に振り返った。
「おはよう。心の準備はいいかな?」
ゆっくりと部屋に入ってきたのは、私服のダルクと、あたしと同じ侍女の服を着たユーリ。
「…うん。だだだ大丈夫っ」
「ちょっと、ものすごく噛んでるけど」
ユーリに鋭い突っ込みを入れられ、あたしは乾いた笑い声を漏らした。
「あはは…なんか、いよいよだなーって思うとダメだね」
「全く、ダルクが余計なこと言うから」
「え?僕のせい?」
「あたしなんか、いつも通り働きに行く気分だけどね」
ふうっとため息をついたユーリが、あたしの近くまで歩いてくると腕を掴んだ。
灰色の大きな瞳が、真っ直ぐあたしに向けられる。
「いーい?城には、もうエルとアスティ、オーガ王子にリュウさん、フィオもいる。それで、あたしと一緒に行くの。…怖いものなんて、何もないでしょ?」
「ーーー…」
自信たっぷりな、ユーリの言葉。
それはどこかエルに似ていて、思わず笑みが零れた。