世界の果てに - 百年の光 -
思わずきょろきょろと視線を走らせていると、ユーリに思いきり引っ張られた。
「感動してるとこ悪いけど、目的忘れないでよね」
「わ、忘れてませんっ」
慌てるあたしをよそに、ユーリは迷わず通路を進んでいく。
途中、何度かすれ違う侍女に声を掛けられたけど、ユーリはサラリと「新人教育中なの」と返す。
すると、みんなあたしに「頑張ってね」と笑顔を向けて仕事へ戻っていくから、その度にあたしは安堵のため息をついていた。
「大丈夫よ。侍女なんてごまんといるし、たった一度挨拶したくらいじゃ顔なんて覚えてないわ」
「そ、そうだよね」
「…よし、厨房に着いたわよ」
ユーリが足を止めたのは、大きな扉の前。扉の外にいても、中から美味しそうな匂いが漂ってきているのが分かった。
扉を開けて中に入ると、多くの人が忙しなく動き回っている。
「あれ、どうしたんだ?君達」
あたし達に気付いた男の人が、食器を並べながらそう言った。
「地下牢に食事を運ぶ当番なんです。この子は新人で、色々と教えてあげなきゃならないので、早めに用意して頂けますか?」
にっこりと笑顔を浮かべたユーリに、男の人は頬の筋肉を緩ませる。