世界の果てに - 百年の光 -
「何だ、男いたのか…、っ!」
へらへら男は俺の姿を見ると、何かに気付いたかのように、急に怯え始めた。
「そ、その傷跡…」
「………」
俺は黙ったまま男を睨むと、男はそれ以上何も言わずに走り去って行った。
その様子を、ちびっこがポカンと見ていた。
「…え?何?エル何したの?」
「何もしてねぇよ。つーかお前アホか。あんな野郎に話聞くなんて」
「え?」
「どう見たってろくでもない野郎だ。情報を持ってるわけない」
行くぞ、と促すと、ちびっこは渋々と歩き出した。
「…ねえ、傷跡って…その左目の傷のこと?」
遠慮がちにそう訊かれ、俺はすぐには何も答えなかった。
―――左目の、傷。
これは俺の生きた証であり、忌まわしき呪いでもあった。
「気にすんな」
ただそれだけ言うと、ちびっこは素直に押し黙った。
一応、人を気遣う気持ちはあるのか、そうじゃないのか。
それきり、ちびっこは傷跡のことを口にはしなかった。