世界の果てに - 百年の光 -
…何だろう、胸がザワザワする。
「今日は式典だけど…城の人はいつも通りに働いてるよね?」
「そうだけど、それがどうか…」
そこまで言って、ユーリがハッと息をのんだ。
すぐに振り返り、廊下を確認してから眉を寄せてあたしを見る。
「……おかしいわね。地下牢までもうちょっとなんだけど…一旦引き返しましょ」
あたしとユーリが感じた、違和感の正体。それは、厨房を出てからここに来るまでの間、誰とも会わなかったこと。
地下牢へと続く廊下に、衛兵が誰一人としていないのは不自然に思えた。
ユーリに促され、曲がったばかりの角を引き返す。
…けれど、すぐに何かにぶつかった。
「痛っ…、な、に?」
鼻を押さえながら顔を上げると、まず目に入ったのは銀色に輝く長い髪。そして、あたしを見下ろす淡い紺の瞳。
一瞬呼吸を忘れるほど、端正な顔立ちの男の人が目の前にいた。
謝らなきゃ、と頭が判断したその時、ユーリの声が静かな廊下に響く。
「ーーーーー国王、陛下…」
国王、陛下?