世界の果てに - 百年の光 -
その言葉が、オーガのお父さんであるこの国の王で、あたしを生け贄にしようとしている人物を示していると理解した瞬間、体が固まった。
…どうしよう、国王は夕方まで部屋にいるはずじゃなかったの!?
ここで捕まったら、あたし達の作戦は水の泡。どうしよう、どうすればーーー…
「…ここで、何をしている?」
すぐにでも捕らえられると思っていたあたしは、投げ掛けられた質問に目を丸くした。
探るような国王の視線は、ただ単純に怪しんでいるだけのようで…もしかして、あたしが生け贄だとは分かっていない?
「ーーー私達は、地下牢へ行く途中でした。食事当番を任されていますので」
先に口を開いたのはユーリで、堂々とそう答えたあと、手元の食料を見せた。
「…けれど、ご覧の通り廊下に衛兵がおりませんでしたので…不安を感じ引き返そうとした所でございました。その者は新人ですので、ご無礼をお許しください」
そこまで言って頭を下げたユーリの演技は、完璧だった。
言ってることは本当のことなんだけど、あたしだったら間違いなく、動揺を隠せなくて怪しまれるだろう。
「…そうか。すぐに確認させよう。暫くはここに近付かない方が良い」
国王はユーリの言葉を信じたようで、そう言うとあたしがぶつかったときに落としてしまったバスケットを拾った。
「ぶつかって悪かった」
「……!い、いえっ、私こそすみませんでしたっ…!」
その誠意を示す行動に、あたしは驚きながらも慌てて謝る。