世界の果てに - 百年の光 -
∴救うべき光たち
………カタッ
「…………?」
小さな物音をきっかけに、あたしはゆっくりと現実に引き戻されていった。
気だるい体を起こすと、徐々にクリアになっていく視界で、自分の置かれている状況を理解した。
「……牢屋、かぁ…」
アスティの弟、デューイくんに牢屋に閉じ込められたことを思い出し、思わず苦笑した。
あのときは牢屋が古く、簡単に壊れたけど…見ただけで、頑丈な造りでできていることが分かる。
鉄格子に近付いて、辺りを見渡しても、人がいる気配はない。ユーリの姿も見えない。
エルたちと同じ牢屋に…って淡い期待は簡単に打ち砕かれた。
良いことと言えば、手足が縛られてないことぐらい。
小さくため息をついて、広い牢屋内に何かないかと辺りを見渡そうとしてーーーあたしは悲鳴をあげた。
「ひゃあ!?」
ぼんやりと浮かび上がった、一つの影。幽霊かと思ってしまったけど、よく見るとちゃんと人間だった。
「……な、だ、誰?」
「…すみません。声を掛けるタイミングを逃してしまって…」
弱々しくそう口を開いたのは、同い年くらいの男の子。
焦げ茶の髪に、同じ色の瞳。この世界にしては髪も瞳も地味な方で、体を覆うのは紺のローブ。
「もしかして…魔法使い?」
「え?」
「な、なんてね!格好が似てるから…」
ポツリと溢れた言葉に、慌てて笑うと、彼は困ったように微笑んだ。