世界の果てに - 百年の光 -

あたしの問いに、フィオは眉を下げたまま微笑んだ。


「…実は、僕がこそこそと動き回ってるのが陛下にバレてしまいまして…。それで生け贄なんてやめましょうと説得したらーーーここへ」


頼りにならなくてすみません、と謝るフィオに首を振る。


「そんなこと言ったら、あたしのがごめんなさいだよ。一番捕まったらいけない立場なのに」


ため息をついてから、改めて牢屋内を見渡した。


「フィオの魔術で、ここから出れたりしないの?」


「…ここは、僕自身で内側から魔術が使えないようにした特別な牢なんです。万が一を考えて、リオさんもここへ入れられたんだと思います」


魔術は難しい…ってことは、やっぱり実力行使しかないのかな。


でもあたしは女だし、フィオは…魔術師ってくらいだから力に期待はできなさそうだし…。


うーんと唸りながら、牢屋を行ったり来たりしていると、フィオがポツリと呟いた。


「……マーサ」


「へ?」


よく聞こえずに振り返ると、フィオはハッとしたように口元を押さえた。


「す、すみません。妹なら、転移術が得意だったのですぐに抜け出せると思って…転移術は高度魔術なので、僕の力では抑えられないんです」


「転移術…!すごい、妹さんなんとか呼べないの!?」


顔を輝かせてフィオに近寄ると、その顔はすぐに曇ってしまった。
< 548 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop