世界の果てに - 百年の光 -
あたしの問いに、フィオは眉を下げたまま微笑んだ。
「…実は、僕がこそこそと動き回ってるのが陛下にバレてしまいまして…。それで生け贄なんてやめましょうと説得したらーーーここへ」
頼りにならなくてすみません、と謝るフィオに首を振る。
「そんなこと言ったら、あたしのがごめんなさいだよ。一番捕まったらいけない立場なのに」
ため息をついてから、改めて牢屋内を見渡した。
「フィオの魔術で、ここから出れたりしないの?」
「…ここは、僕自身で内側から魔術が使えないようにした特別な牢なんです。万が一を考えて、リオさんもここへ入れられたんだと思います」
魔術は難しい…ってことは、やっぱり実力行使しかないのかな。
でもあたしは女だし、フィオは…魔術師ってくらいだから力に期待はできなさそうだし…。
うーんと唸りながら、牢屋を行ったり来たりしていると、フィオがポツリと呟いた。
「……マーサ」
「へ?」
よく聞こえずに振り返ると、フィオはハッとしたように口元を押さえた。
「す、すみません。妹なら、転移術が得意だったのですぐに抜け出せると思って…転移術は高度魔術なので、僕の力では抑えられないんです」
「転移術…!すごい、妹さんなんとか呼べないの!?」
顔を輝かせてフィオに近寄ると、その顔はすぐに曇ってしまった。