世界の果てに - 百年の光 -
あたしを伺うように見ると、フィオは遠慮がちに口を開いた。
「こんな時に…なんですけど、少し昔話をしてもいいですか?」
そう言ったフィオの表情は、あたしに謝ったときのように苦しそうで、断ることなんかできない。
隣に腰を下ろすと、フィオはどこか遠くを見つめながらゆっくりと話し出した。
フィオの生まれはこの国ではなく、小さな田舎の国だった。
そこの国は国民は少ないけれど、みんな魔術が優れていてーーーただ、近隣の国はそれを危惧していたという。
「いずれ、魔術によって国を乗っ取られると考えたみたいです。そんなバカなこと、誰もしようと思っていなかったのに」
それなのに、とフィオは悔しそうに続けた。
「…ある晩に、僕たちは襲撃されました。魔術は人を傷付ける為にあるわけではない。そう国王から教えられていた僕たちは、誰一人対抗しようとは思わなかった」
家は焼き払われ、矢が飛び交い、剣が舞う。地獄のような光景の中で、人々は自分を護る気力さえ失っていた。
「僕は…妹を護ることに必死でした」
フィオは手のひらを見つめ、ぎゅっと拳を握る。
「妹だけは、ここで死んではいけない。…そこで僕は、妹に変化術をかけたんです」
「え…?」
「狙われているのは、魔術を使える国民ですから。同時に、僕と僕たちの国の記憶は消しました…今となっては、それが妹の為だったのかは分かりませんが…」
悲しそうに微笑んだフィオに、かける言葉が見つからず、あたしは黙って次の言葉を待つ。