世界の果てに - 百年の光 -
………‥‥
僅かに歪んだ表情の理由を、訊こうとは思わなかった。
エルが言いたくないなら、無理して訊くことなんてない。
訊いたところで、きっと何も出来ないから。
…それに、あたしはもうすぐ、この世界からいなくなる。
そう考えると少しだけ寂しい気もするけど、早く日本に帰りたい気持ちは揺るがない。
「ごめんね、聞いたことないわ」
「…そうですか」
宿屋の女主人にそう言われ、あたしはがっくりと肩を落とした。
かれこれ1時間以上聞き込みをして回ってるけど、情報はゼロ。
異世界の人間が来ることですら信じられない話なのに、元の世界に帰る方法を知っているはずはなかった。
「はあ…どうしよう」
とぼとぼと歩くあたしの隣で、エルが鼻を鳴らした。
「そんなすぐに情報得られるわけねぇだろ。まさか、明日にでも帰れるとか思ってたのか?」
その言葉に、あたしは喉を詰まらせた。
…はい。思ってました。