世界の果てに - 百年の光 -

「妹をなんとか逃がした僕は、死を覚悟しました。その時現れたのがーーー現アメルティカ国王、ジェイル陛下なんです」


フィオが住んでいた国が、襲撃されそうだという噂を聞き付けた国王は、視察を兼ねてやって来て…悲惨な光景を目の当たりにした。


そして国王は、一喝でその場の全てを収めてしまった。


襲撃した者たちを捕らえ、生き残った魔術師たちは自分の部下としてアメルティカに迎え入れた。フィオも、その一人だったという。


「僕にとって陛下は、まるで神様のような人でした。僕の魔術を信頼して下さり、側に置いて頂けて。家族がいなくなってしまった僕の、唯一の支えでした」


だから、とフィオは力強く続けた。


「陛下には、世界の為に生け贄を捧げるなんて…人を殺めるなんて、して欲しくないんです」


「……フィオ、でもね、」


「知っています。リオさんが生け贄にならずにこの世界を救うには…陛下を、殺めなくてはいけないことを」


悲しそうに微笑むフィオは、オーガから全てを聞いてなお、あたしの味方で動く道を選んでくれたんだ。


「もう、後悔したくないんです。この世界の負の連鎖を断ち切るには、この世界の人間が頑張らないと。全てが終わったら…妹を探して、魔術を解くんです」


唇をきゅっと結ぶと、フィオはあたしを見た。


「…ただ、僕一人では何もできなくて…リオさんやオーガ様に頼る形になってしまってすみません」


「……ううん、あたしだって、みんながいるから頑張れるんだよ」


フィオにとって国王が支えだったように、あたしにとってエルとアスティが支えだった。


二人に…みんなに支えられて、今あたしはここにいる。

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