世界の果てに - 百年の光 -
ふぅ、とため息をつくと、複雑そうに顔を歪めるアスティが視界に映った。
「…なんつー顔してんだよ」
「……だって…、オレは二人に、幸せになって貰いたいから」
幸せに。それはきっと、叶わない願い。
「俺が何を伝えても、待ち受ける未来は変わらない。今日、世界を救ってーーーちびっこは元の世界に帰る」
はっきりとそう口にして、改めて実感する。
ちびっこは、俺たちとは生きる世界が違うということを。
「……何も、変わらない。だったら俺は、いつも通りに振る舞うだけだ」
「エル……」
自分自身に言い聞かせるように口にした言葉に、アスティは変わらず悲しそうに眉を下げたままだった。
…知らないうちに根付いていた、要らないと思っていた感情。
愛情を知らずに育った俺だったけど、名付け親の愛は確かにそこにあった。そして、そんなローアンを…大切に想う感情も。
正直言って、未だに恋だの愛だのはよく分からねぇし、ちびっこに対する気持ちも、その部類に入るのかどうかさえ疑問だ。
けど、ちびっこと俺が手錠で繋がれたあの日。
俺を庇って斬られたアイツを抱える中で、もうこんな目には遭わせないと、確かに誓った。
…きっと、そこから始まっていたんだ。