世界の果てに - 百年の光 -
思い返すと、ちびっこの存在に救われた事は数多くあった。
どんなに暴言を吐いても、めげずに突っ掛かってきて。かと思えば、強がる心を上手く隠せず、弱い一面を見せたりして。
「あーーー…、」
今まであまり考えないようにしていただけに、考え始めるとキリがない程浮かんでくる、ちびっこの顔。
思わず呻きながら天井を仰ぐと、アスティのクスクス笑いが耳に届いた。
「……おい。さっきまでの悲壮感漂う顔はどうした」
「あはは。エルが振り回されてるのって面白いなーって」
「アスティ、後で覚えとけよ」
じろりと睨んでも、アスティは変わらず楽しそうに笑っている。
何を言ってもダメだと早々と悟った俺は、ため息をついてから地下牢の入り口へと視線を向けた。
「…そろそろちびっことユーリが来る頃だよな?」
小さくそう問い掛けると、アスティも階段の方へと視線を移す。
「そうだね。オレたちが宿を出て、十分後にはリオたちも動くはずだから。……そう考えると、少し遅い気もするけど」
眉をひそめたアスティと、顔を見合わせる。
さっき感じた嫌な予感が、外れればいい。…柄にもなくそう祈ってはみたものの、やはり俺の勘は当たるらしかった。
「………ん?」
地下牢の階段の上の方で、何かが倒れたような鈍い音が
小さく聞こえた。