世界の果てに - 百年の光 -
アスティに支えられて立ち上がると、エルと対峙していた国王と目が合う。
…その口元が少し微笑んだように見えたのは、あたしの気のせいだろうか。
「成程。…まるで生け贄ではなく姫君のようだな」
国王が再び黒い剣を構えると、エルがアスティの名前を呼んだ。
「ちびっこに渡せ」
「了解、キャプテン」
エルがアスティに向かって投げたのは、ティアラが異空間であたしにくれた長剣。
アスティはそれを受け止めると、あたしに差し出した。
「はい。リオのだよ」
「あ……」
「オーガが心配してた。ちゃんと届けてあげないと、って」
あたしは剣を抱えると、橋の上にいるオーガを振り返る。
あたしの視線に気付いたオーガが、見えない壁を叩くのをやめ、代わりに拳を掲げた。
ーーー「頑張れ」と、言っているかのように。
「……ジェイル陛下」
あたしに名前を呼ばれたのが意外だったのか、整った眉がピクリと動く。
「あたしも、この世界を救いたい」
「……それなら、その身を捧げてくれ」
「ーーー絶対、いや!」
鞘から引き抜いた長剣は、柄の紅い宝石を反射して輝く。