世界の果てに - 百年の光 -
この世界を救いたい。でも、生け贄になりたくない。
じゃあ、国王を倒す?…それも嫌だ。
「この世界の為に、犠牲になった人たち。この世界で、あたしを助けてくれる人たち。…その人たちに、背を向けたくない」
「………」
「分かってるんでしょ?あたしが戦う相手はあなたじゃないし、あなたが戦う相手はあたしじゃない」
攻撃もせず、口を開こうともせず、国王はじっとその場に佇み、あたしの言葉を聞いてくれている。
あたしを生け贄にするーーー命を奪うチャンスは、いくらでもあった。
今ここで、あたしに命があるのは…国王に、ほんの僅かでも迷いがあるからだ。
「ーーーあたしたちが戦うべきなのは、この世界よ」
すうっと息を吸ってから、静かに吐き出した言葉。
真っ直ぐに見据えた国王の瞳が、ゆらゆらと揺れる。
この世界を救うために、この世界に戦いを挑む。
原因と真正面から向き合わないと、永遠に負の連鎖は断ち切れない。
「一緒に、世界を……」
そこまで言って言葉を止めたのは、何かがあたしの頬を掠めたからだった。
徐々に感じる痛みに、思わず右手を添えて確かめると、手のひらに付いたのは真っ赤な血。
「…君の言葉は、これ以上は聞けない」
ようやく響いた声に目を向けると、苦しそうに顔を歪めた国王の姿が目に入る。