世界の果てに - 百年の光 -
…まさか。あの崩れ落ちる中に、戻ったりしてないよね…?
みんな同じ事を考えてしまったのか、もう原形を留めていない建物へと一斉に視線が向く。
もしオーガが中にいたとしたらーーー…
「リオ」
ふらふらと歩き出そうとしたあたしの腕を、アスティが掴んで止めた。
「…アスティ、オーガを探しに行かなきゃっ…」
「うん、大丈夫だよ。ほら」
アスティが微笑んで指差す先を追うと、建物より少し奥の森の中から、ゆっくりと近付いて来る人影が見えた。
足を引きずっているオーガが肩に担いでいるのは…国王だ。
「オーガ…!」
名前を呼んで駆け寄ると、あたしたちに気付いたオーガが笑みを浮かべた。
「良かった、みんな無事だったんだな。…ってリオちゃん、腕が…」
「あたしはいいの!オーガこそ…」
引きずっている足は、服が破け、痛々しい傷痕が覗いている。そこから国王に視線を移すと、さらに痛々しくて、思わず目を背けた。
「…ごめん、オーガ。あたしのせいで…国王は自分から…」
「リオちゃんのせいじゃない。けど…そっか。まさか、自分で自分の命を奪うなんてことをする父親だとは、思ってなかったな」
バカだよなー、とオーガが乾いた笑い声を漏らす。
でも、あの崩れ落ちる建物の中に戻るくらい、大切な家族だったんだ。