世界の果てに - 百年の光 -
ーーーーー……‥
ふわり、ふわり。
鼻を掠める甘い香りに誘われるように、あたしはゆっくりと瞼を持ち上げた。
「ーーー…リオ?」
名前を呼ぶその声だけで誰だか分かったあたしは、まだぼんやりとした人影に笑いかけた。
「…アスティ。おはよ…おはよう?」
「うん。こんばんは、が正解だね」
思わず疑問系になった挨拶を、アスティが丁寧に訂正する。
徐々にクリアになる視界で、自分の状況を呑み込んだ。
「そっか…あたし、気を失っちゃって。ここ、オーガのお城の部屋?ベッドふかふかだ」
ベッドの感覚を体を動かして確かめるあたしに、アスティが眉を下げて微笑む。
「城の医務室だよ。…良かった、目を覚まして」
「あはは、大袈裟だよアスティ。寝てたのって三時間…五時間くらいでしょ?」
「三日だよ」
「ほら、みっ……三日ぁ!?」
予想外の返答に、あたしは思わず叫んでしまった。途端に、外からバタバタと駆け寄る音がする。
「リオさんっ…!?」
勢いよく開かれた扉から現れたのは、腰まで伸びた艶のある焦げ茶の髪を靡かせた女の子。
間違いない。あのとき、崩れ落ちる建物にフィオと一緒に突然現れ、助けてくれた子。
そして、この子はーーー…