世界の果てに - 百年の光 -
ユーリの通信が途絶えたことで、みんなが一斉に動き出してくれたこと。
リュウさんの計らいで、"月の咆哮"のメンバーが囮役になってくれたこと。
"神の祭壇"に目星を付け、オーガが地下牢の存在を思い出したこと。
「…オレたちが地下牢に着いたとき、そこにいたのはフィオだけだったんだ」
「え?見張りとかいなかったの?」
アスティは小さく頷くと、言葉を続ける。
「フィオの話だと、リオが国王に連れていかれたあと、衛兵はすぐに持ち場に戻ったらしいよ。それが国王の命令で、誰かが助けに来ることを予想していなかったのかどうかは…今はもう分からないけど」
「…うん、そうだね」
「地下牢の鍵は、事前にオーガが手に入れていて、フィオからリオが連れていかれたことを聞いたんだ」
それから、フィオには転移術が使える妹…マーサがいて、訳あって馬に変えたマーサが、あたしたちと旅をしていたことを知った。
フィオはマーサの居場所をアスティに聞き、一旦その場で分かれたらしい。
「兄さんは、わたしがいる宿まで来ると、魔術を解いて記憶を戻してくれました。それから、宿にいたダルクさんに事情を説明して、一緒に城まで戻ったんです」
マーサの話で、だんだんと話が一本の線に繋がっていく。
「城に着いたら、リュウさんがユーリさんを見つけたと連絡が入って、ダルクさんとはそこで二手に分かれました。わたしと兄さんは"神の祭壇"を目指しました」
ちょうどその時、オーガが祭壇のある遺跡から飛び出してきたらしい。
そして大地が揺れ、遺跡が崩壊し始めた。オーガから聞いた情報を元に、フィオとマーサは転移術を使いーーーあたしたちの前に現れた。
少しでもタイミングが遅ければ、あたしたちはあの瓦礫の下に埋もれていたかもしれない…そう考えるとぞっとする。