世界の果てに - 百年の光 -
あたしは優しいマーサに笑い返してから、ちらりとアスティを見た。
「近くにこんな可愛い子がいたら、そりゃあ好きになっちゃうよね…」
うんうん、と頷きながらそう言うと、アスティはきょとんとした顔で首を傾げた。
「オレ、彼女のことはずっと昔から好きだったよ」
「…へ?昔から?」
「うん。エルに会う前に、会ったことあるから」
ね、と同意を求めたアスティに、マーサは頬を染めながらコクコクと頷く。
「まだ幼い頃ですけど…父に連れられて、メルティアス国に挨拶に訪れたことがあって。そこでアスティ様にお会いしました」
「あれ、そのときフィオっていなかったよね?」
「はい。兄さんは残念ながら体調不良で…」
「ちょっ、ちょっと待った!」
あたしが片手を前に突き出して遮ると、二人はぱちくりと瞬きを繰り返した。
「エルに会う前ってことは…アスティがまだ王子だった時だよね?」
「うん」
「そのアスティに会えるってことは、マーサは…」
あたしが訊きたいことが分かったのか、マーサが「あ、」と声を漏らした。
「もしかしてリオさん、兄さんから何も聞いてませんか?…今はもう滅んでしまった国ですけど、わたしたちはそこの国王の子供でした」
「つ、つまり…マーサはお姫様で、フィオは王子様?」
「はい。昔は、ですけど」
さらっと答えを口にされたけど…何かもう、驚くことがたくさんありすぎて困る!
つまり、前にアスティが話してたずっと想いを寄せてるお姫様は、マーサってこと?