世界の果てに - 百年の光 -
「まさか、姿が変わってオレたちと一緒に旅してるとは思いもしなかったけどね」
「…お姫様に荷台引かせてたんだもんね」
「い、いえっ!馬のときは凄い力がありましたしっ!それにっ…」
あたしの言葉に、マーサは慌てて首を振ったかと思えば、どんどん顔が赤くなっていく。
「そ、それに…アスティ様と一緒にいられたので…」
湯気が出そうなくらい真っ赤なマーサに、アスティが「うん」なんてサラリと笑って言うから、あたしまで照れてしまった。
甘い雰囲気に呑まれる前に(もうかなり甘いけど)、あたしはベッドから降りて立ち上がる。
「リオさん?」
「ちょっと散歩してきてもいいかな?外の空気も吸いたいし」
心配そうなマーサの隣で、アスティが微笑んだ。
「エルなら、高いとこにいるよ」
「!」
どうやらあたしの思考は、アスティには筒抜けのようで。悔しいような、恥ずかしいような気持ちになる。
「た、高いとこってどこ?」
「んー、分からないけど、考え事するときはいつも高いとこにいるから。木の上とかね」
「木の上…。頑張って探してくる」
部屋の扉を半分開きかけた時、アスティに名前を呼ばれて振り返る。
「ーーーエルは、誰よりも心配してたよ」
「……うん」
静かに扉を閉めてから、あたしはすぐに駆け出した。
ーーー早く顔が見たいよ、エルーーー…